婚姻費用
目次
婚姻費用(生活費)に関するよくあるご相談
- 婚姻費用をいくらもらえるか知りたい
- 婚姻費用を払ってもらえなくて困っている
- 生活費のほかに子の学費や習い事の費用も負担してほしい
- 高額な婚姻費用を請求されて困っている
- 住宅ローンの負担と生活費と両方負担するのが大変だ
- 適切な婚姻費用額を知りたい
婚姻費用(生活費)はまさに生活の糧になります。後悔しない離婚のために、婚姻費用に関する注意点をしっかり押さえて準備しておきましょう。
婚姻費用とは
婚姻費用とは、夫婦及び子(未成熟子)が生活する上で必要な生活費のことです。具体的には、住居費、日用品費、学費その他一切の生活費です。婚姻費用は夫婦の収入等に応じて負担する額が変わりますが、同居していても別居していても負担義務は続きますので、同居又は別居に関わらず婚姻費用分担請求は可能です。
婚姻費用の支払い義務者
婚姻費用は、夫婦がそれぞれ負担する義務があります。もっとも、収入や子を誰が監護養育しているかによって負担義務が変わりますので、例えば子がある夫婦が別居し妻が子を監護養育している場合で、夫の方が妻よりも収入が多い場合は、夫から妻に対して婚姻費用を支払う義務が生じます。
婚姻費用の決め方
婚姻費用の決め方ですが、夫婦間で合意すればその額になります。どんなに高額でも低額でも合意があればその通りになります。
話し合いで決まらない場合には、婚姻費用分担請求調停を家庭裁判所に申し立てることになります。調停でも決まらない場合には、調停はそのまま審判に移行しますので、家庭裁判所が審判で決定します。家庭裁判所が決定する場合には、裁判所から出している「婚姻費用算定表」に従いその範囲内で審判を出すことになりますので、まずは婚姻費用算定表を基準にして考えるべきでしょう。
なお、婚姻費用算定表については、従前よりもやや増額されています。詳細は令和元年12月23日に公表されていますのでご確認ください。
(平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について)
なお、婚姻費用は配偶者と子の生活費が含まれていますので、養育費よりもやや高額です。婚姻費用は別居しても分担義務を負いますので、離婚まで支払い義務が継続します。
婚姻費用の消滅時効
婚姻費用の額を当事者間で取り決めていた場合には、各発生時から5年の消滅時効にかかります(民法169条定期給付債権)。他方、額を取り決めていない場合には、理論上は消滅時効にかからないとも思えますが、実際には婚姻費用分担調停申立時(又は請求時)の月から認められるでしょう。
なお、既に調停や審判で婚姻費用額を決定していた場合でも、当該調停成立又は審判が確定した時点でその弁済期が到来していない債権(成立又は確定した時点ではまだ将来のことを決めている婚姻費用)についても同様に5年の消滅時効にかかります。
過去の婚姻費用について未払いがある方は是非一度弁護士にご相談ください。
婚姻費用に関する注意点
支払いがないときは早めの請求を
別居後婚姻費用の支払いがされない場合は、早めに相手方に婚姻費用の支払いを請求してください。もし支払われない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることが必要です。婚姻費用分担請求調停は、調停が不成立になっても必ず審判に移行しますので、家庭裁判所で何等かの判断が出されます。その際の起算時は多くが調停申立(又は通知時)ですので、なるべく早めに請求するのが良いでしょう。
未払いがある場合の強制執行手続き(差押え)
未払いの婚姻費用がある場合で、既に調停・審判・公正証書がある場合には、過去5年に遡って差押をすることが可能です。この場合は、裁判所に差押の申立をして、配偶者の資産(銀行口座、給与債権、不動産その他財産)から回収します。
また、通常の債権と異なり、婚姻費用は今後発生する将来分についても差押えが可能です(但し差押後に支払われる給与のみから取り立て可能です)。
給与の差押え額ですが、税金等を控除した残額の2分の1までが差押え対象となります(給与から税金等を控除した額が66万円未満の場合)。
このように、婚姻費用は通常の債権よりも強い差押効力がありますので、未払がある場合は是非弁護士にご相談ください。