年金分割

離婚時の年金分割に関するよくあるご相談

  • 離婚による年金分割の方法が知りたい
  • 離婚時の年金分割手続きをしてほしい
  • 離婚の際の年金分割でいくらもらえるか知りたい
  • 離婚の際相手方に年金分割をしてほしくない

離婚時の年金分割は忘れずにしておきたいところです。平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和元年12月厚生労働省年金局)によると、離婚時の年金分割は離婚件数全体の13.5%程度しか行われていません(平成30年度離婚件数212,871件、うち合意分割21,841件、3号分割のみは6,952件。)。
後悔しない離婚のために、年金分割に関する注意点をしっかり押さえて準備しておきましょう。

離婚時の年金分割とは

離婚時の年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割できる制度です。年金制度は、1階部分の国民年金(基礎年金)、2階部分の厚生年金(以前の共済年金も含みます)、3階部分の私的年金とありますが、2階部分の厚生年金が分割対象です。
なお、年金分割制度は支給される年金額自体を分割するのではなく、保険料の算定基礎となる標準報酬月額及び標準賞与額を分割する制度です。

離婚時の年金分割を請求できる場合

離婚時の年金分割は厚生年金(共済年金も平成27年10月に厚生年金として統一)部分が対象となりますので、婚姻期間中に配偶者が厚生年金に加入していた場合です。したがって、配偶者が国民年金のみに加入していた場合は年金分割を請求できません。
また、いわゆる企業年金は3階部分の私的年金ですので、年金分割の対象ではありません(場合によって財産分与対象として考慮されます)。

離婚時の年金分割の種類

離婚時の年金分割の種類は、①合意分割と②3号分割とに分かれます。

① 合意分割

平成19年4月1日以降に離婚をし、当事者間の合意又は裁判手続きにより按分割合(分割対象となる婚姻期間中における当事者双方の厚生年金記録合計額のうち、分割を受けることにより増額される持分割合のこと)を定めた場合です。婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされますので、3号分割の対象となる期間については、3号分割による標準報酬分割に加えて、合意分割による標準報酬分割も行われることになります。
離婚時の年金分割を行う場合は、通常この合意分割を行うことがよいでしょう。

② 3号分割

平成20年5月1日以降に離婚をし、国民年金の3号被保険者であった者の請求により、平成20年4月1日以降の婚姻期間中の3号保険者期間における相手方厚生年金記録を2分の1ずつ分割する制度です。当事者の合意は必要ありません。

離婚時の年金分割に関する情報の取得方法

年金分割の按分割合をどうしたらよいかわからない、分割後の年金額が知りたいという方は、まずは「年金分割のための情報通知書」をお近くの年金事務所で取得してください。
年金分割のための情報通知書には、対象期間標準報酬総額、按分割合範囲、対象期間等の情報が記載されています。離婚前でも離婚後でも取得が可能です。
請求をすると、後日(概ね2週間程度)で日本年金機構から通知書が送られてきます。2名で一緒に請求した場合にはそれぞれに交付され、1名で請求した場合で離婚している場合はそれぞれに交付、離婚をしていない場合は請求者のみに交付されます。
取得に必要な書類や手続きに関しては、日本年金機構のホームページをご欄ください。

離婚時の年金分割の方法(合意分割)

年金分割の具体的な方法は、当事者間で①合意ができた場合と②合意ができなかった場合に分かれます。

① 当事者間で合意ができた場合

当事者間の話し合いで年金分割の合意ができた場合には、当事者2名で年金事務所窓口に行って請求することができます。
2名揃って窓口に行くことが難しい場合には、事前に公証役場で公正証書により按分割合を記載した書類を用意することも考えられます。

② 当事者間で合意ができなかった場合

当事者間の話し合いで年金分割の合意ができなかった場合は、家庭裁判所での調停・審判又は裁判判決による按分割合決定をします。特段の事由がない限り、通常は2分の1ずつ決定されることが多いです。離婚をこれからする場合には、離婚とともに年金分割の按分割合決定がされますが、離婚後に年金分割のみを審判することも可能です。
なお、家庭裁判所で按分割合決定を受けたのち、社会保険庁に対して年金分割改訂請求を別途行う必要がありますのでご注意ください(年金事務所にて「標準報酬改定請求書」を提出します。日本年金機構のホームぺージからダウンロードできますが、わかりにくいので、年金事務所で直接手続きをした方がよいでしょう)。

離婚時の年金分割の消滅時効

年金分割の請求は原則として2年で消滅時効にかかりますので注意してください。
具体的には、離婚・婚姻取消・事実婚の場合に3号被保険者資格を喪失して事実婚関係が解消した日の翌日から起算して2年以内に年金分割改訂請求を社会保険庁に行う必要があります。
但し、離婚から2年以内に調停・審判を申し立てた場合には、上記期間が経過しても、調停成立又は審判確定から1か月以内に年金分割改訂請求を社会保険庁に対して行えば例外的に請求可能です。ご心配な方は離婚時の年金分割に詳しい弁護士にご相談ください。

解決事例(実績の一例)

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この記事を書いた人 弁護士 大澤美穂子

2005 年 10 月弁護士登録(第二東京弁護士会所属)
クラース東京法律事務所代表弁護士
企業法務、一般民事、離婚などの家事事件、高齢者問題(成年後見、遺言、相続)など広く取り扱い、クライアントのニーズに合った最適な解決方法を目指している。

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