離婚調停とは
離婚調停とは、家庭裁判所で行う夫婦関係調整調停の一種です。離婚をする場合、夫婦間で任意の話し合いにより離婚届を出す場合(協議離婚)が多いですが、話し合いがつかない場合には、裁判所を利用した離婚手続きに進みます。離婚裁判(訴訟)を申し立てる前に、必ず調停での話し合いを経る必要があるため(調停前置主義といいます)、調停申し立てることになります。
離婚調停の手続き概要
1)申立て
まずは相手方配偶者の住む裁判所を管轄する家庭裁判所に対し、戸籍謄本その他書類と一緒に調停申立書を提出します。費用は印紙1200円、所定の郵便切手が必要です。
2)裁判所から相手方への郵送
申立を行うと、申立人の都合のよい日時を確認した上で裁判所が第1回調停期日を決め、裁判所から相手方配偶者に対し、調停申立書が郵送されます。
3)期日と時間帯
調停期日は、概ね1か月から1カ月半に1回程度、時間帯は地方によって異なりますが、東京家庭裁判所本庁の場合は、午前の部が10時から12時、午後の部は13時半から15時半が標準です。
4)第1回調停期日
予定された期日に家庭裁判所に行き、申立人は申立人待合室、相手方は相手方待合室で待機します。時間になると調停委員が呼び出しますので、調停委員とともに調停室に入ります。調停室では、調停委員(男性と女性1名ずつ)がいます。調停委員会は3名で構成されており、もう1名は裁判官ですが多数の事件を掛け持ちしていますので、通常は調停期日には出てきません。大事な時(調停成立又は不成立など)のみ同席しますが、調停委員会内で常に情報共有していますので事案は把握しています。
第1回の期日では、通常は申立人と相手方が同席して、調停手続きの概要について調停委員から説明があります(もっとも、同席するのが差し支える場合には、事前に申告すれば同席しないよう取り計らってくれます)。東京家庭裁判所では、子の親権・面会交流等について争いがある場合は、子の面会交流に関するビデオを閲覧するようになりました。
その後、申立人のみ調停室に残り、調停委員に対して自分の主張を伝えます。概ね30分程度話をして退室し、待合室にて待機します。その間、相手方が同じように調停室に入って調停委員と話をしています。これを2回繰り返し、その日の期日は終了となります。終了時には、今日話をした内容のまとめと、次回期日までに用意すべき事項を確認して終了となります。
5)第2回調停期日から成立まで
第2回調停期日も第1回同様に進行します。話し合いが進み、調停成立時には裁判官と書記官も同席し、全員揃って調停調書を読み上げて調停成立となります。読み上げた調停調書は後日郵送(又は窓口交付)されます。調停調書は裁判所の判決や公正証書と同じ強制力がありますので、金銭不払いを行うと強制執行の対象となりますので注意してください。
なお、調停で離婚を成立させる場合には、代理人弁護士が就いていても必ず本人の出席が必要です(どうしても本人が体調不良等で出席できない場合には、家事事件手続法284条による調停に代わる審判により例外的に審判離婚がありえます)。
審判手続きについて
離婚調停では、離婚自体が調停で成立しない(不成立)の場合には、審判ではなく離婚裁判(訴訟)を別途申し立てる必要があります。また、離婚に伴う慰謝料請求・財産分与・養育費・年金分割についてもいずれも調停不成立で終了となります。
しかし、例えば婚姻費用分担請求調停や、離婚後の財産分与調停・養育費請求調停については、調停が不成立になっても審判に自動的に移行します。審判では、調停委員会の3人目である裁判官が主体となって進行し、双方の主張立証を経た後、裁判官が審判を出します。
このように、各手続がどのような見込みになるのかを確認しながら手続きを進めていく必要があります。
よくあるご質問として、調停は弁護士に頼まないで自分できないか、と聞かれることがあります。確かに調停手続きは裁判所で行うとはいえ、調停委員もいますし、話し合いの手続きですので、ご自身だけで行うことも可能です。当事務所にご相談いただいた場合でも、事案によってはまずはご自身での調停申立をお勧めする場合もあります。
しかし、調停は実は複雑な手続きが絡んでいること、調停委員や裁判官の考え方を把握した上で戦術を組み立てる必要があること、代理人弁護士が就いているとポイントを押さえた主張立証ができるため有利な展開が見込めることなどから、調停段階から代理人弁護士をつけることは非常に有益です。離婚調停における代理人弁護士の選任率は年々増加しており、平成30年段階で50%強です(訴訟時の代理人選任率はほぼ100%となっています)。
ご自身の場合はどうしたらよいか、一度信頼できる弁護士にご相談されると良いでしょう。